2010年 02月 12日 ( 1 )

東京ロマニ negra

今となってはもうわからない事だし、もうどうでもいい事でもあるんだけれど。

ぬるい唾液の温度で舌の上でゆっくりと溶かし、薄くなった飴を溶かしきれず割ってしまった瞬間の罪悪感なのか、
冷え込んだ朝にぬかるんだ地面の上を力及ばずとも守るようにはった薄氷を踏み割った時の快感なのか。

その時どう感じていたのか。
今となっては。

飛沫を上げ走る車の音で天気が悪い事は想像できた。
現実は想像できるのに、想像は現実になかなかならない。

その車がタクシーかそうでないかすら想像できているのに。
飛沫の音の間隔が短いことから深夜であることもすでに体が理解しているのに。

ほこりっぽいカーテンの匂い、散らかった雑誌、飲みかけのアルコール、
昨日の客からのメールもきてるだろう。
太ももに挟んだ両手を開き右手で頭を掻きながら伸ばした左手でつかんだ携帯電話のディスプレイには、

昨日の客からメールがきていた。

想像できた現実だ。

お茶を取り出した冷蔵庫を閉め、逆さまに置いてあるグラスをひっくり返す、
電話が鳴る、ディスプレイを見る、名前を見る、

想像していなかった現実だ。

さっきの飛沫の音の後から、まだ次の飛沫の音は聞こえてきていない。
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by locario | 2010-02-12 01:01